いまの部屋に引っ越して1年半なのですが、
最近、新たな引き出しが発見されました。
ほぼ毎日使っているはずのキッチン、
その一角に、ここ単なる壁面だろうと思っていた場所があって、
ところが、妙な引っかかりを感じる。
引いてみると、小ぶりの引き出しだったんですね。
幅10センチくらいのその引き出しには今も何も入っていませんが、
ちょっと嬉しい。
前に住んでいたアパートにも同じようなことがありました。
ここには結局10年くらいいましたが、
少なくとも5年は経ったある日、
風呂とトイレの照明のスイッチ板に目がとまった。
なにかの汚れかな。
しげしげ見てみると、
真ん中に、3ミリくらいのハチをモデルにしたキャラクターがいた。
あの時も、新たな発見が嬉しくなって、
誰か訪ねてくると「おい、見てみろよ」と自慢したものです。
実にとるに足らないことなんですが、
人間、こういうところに不思議な喜びを覚えたりしますね。
そういえば、前にやった『唐版 滝の白糸』に、
似たようなシーンがありました。
劇に出てきた運送屋2人が、
運んできたタンスの受け取り手を巡ってしばらく揉めたのち、
自分の掌に今まで見たことのないホクロを発見して喜ぶ。
彼らは肝心の送り主のことなどすっかり忘れてしまって、
幸せそうに去って行く。
あの気持ち、今の方がわかるな。
こういう時、唐さんの才に舌を巻きますね。
ネッシーや、王族の墓でなく、
こんなところに発見のたのしみを見出す。
生活感覚と言うんでしょうか。
20代の頃から唐さんには何故かそれがあり、
しかも妙に研ぎ澄まされている。
早熟だなあ。
毎日、蒸し風呂状態の稽古場で、
シャツが透けるほど汗をかいています。
新人が多いので彼らに時間を割いていますが、
ずっとやってきたメンバーにも、きっとまだ見ぬ魅力があるはず。
慣れ親しんだ仲だからこそ、もっと別の引き出しを。
今日は午後から、目いっぱいやろう。