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1月のこと(残り)

1月の総括も終らぬままに、あっという間に2月になってしまった。
というわけで、駆け足で。

結局、1月後半で面白い経験だったのは、劇団員の土岐くんが出演した劇団「地下空港」の劇と、梁山泊が久しぶりに上演した『風のほこり』である。

地下空港の『OLと魔王』は、自分の見る限り徹底して「家族」の話だった。
しかも男性がすべからくダラしない家族の話。
とにかく、お父さんも息子もおじいちゃんも、お母さんの新しい恋人になりそうな一見しっかり者のお医者さんも、すべて男がダラしない。
そんな中で家族はどうやって再生しうるのか、というところの劇だった。

まあ、男のダラしなさは特に現代にはじまったものでは無い気もするが...。
土岐くんもダラしない男の代表格を演じて活躍していたが、はじめての客演を果たしたことで本人は端正になったのではないだろうか。
みなさんにはほんとうにお世話になりました。

そして、上演中2度観に行った『風のほこり』である。
自分はこれまでこの演目を初演、再演と観てきたが、今回の三演ではこの劇のことが本当によくわかった。
初日に目を見開かれるような思いをして、それから約一週間思案をめぐらせた。
久々に単行本を取り出してきては細部を確認し、楽日近くににもう一度この劇を味わった。
良い劇である。単に良い話というだけでなく、切実な劇である。
「どうやったら虚構空間は現実と斬り結べるのか」という演劇人にとって原初の問いをいつも劇作に込める唐さんの手つきは、当然胸に迫る。そしてそれにも増して、モノを媒介としたコミュニケーションが溢れている世の中で、いつまでもナマの他人とナマのやり取りをダイレクトに続けていくのだ、という切迫した決意が伝わってくるのである。
この作品と『下谷万年町物語』は特に演劇をやる上でのエピソード・ゼロなのだ。
思わず、羨ましくなってしまう。

この演目のために自分の持つアトリエをすっかり改造してしまった金さんによると、『風のほこり』の上演は来年のお正月も続くという。


そうそう。最後に。
フランス人ピアニストのエレーヌ・グリモーのコンサートにも行ったが、印象的だったのは握手会。
正確にはサイン会なのだが、並んだ聴衆全員と握手をする彼女。
すごいサービス精神だが、彼女はピアニストである。
手が疲れて今後の演奏に障ることはないのか!?
圧倒的なフィジカルの強さを演奏から感じさせる彼女とすれば、このくらいは平気なのか!?

血まみれでファンにサインする大日本プロレスのレスラーたちを思い出してしまった。
by nakanoatsushi | 2011-02-03 01:55
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